手続:個人事業主の自己破産
業種:大工
性別:男性
借金額:2051万円
1 依頼者の状況
依頼者は、大工として個人事業を営んでいましたが、事業がうまくいかず、事業資金や生活費などにより計10社から合計2051万円の借金を負っていました。
依頼者は、今後も大工の仕事を続けていきたいが、これ以上の返済が厳しいためどのようにしたらよいのか、とのことで当事務所にご相談いただきました。
2 当事務所の対応と結果
当事務所の弁護士が依頼者の財産状況を確認したところ、大工で用いる作業道具の他には、ほとんど財産がない状況でした。
また、依頼者の仕事内容は、取引先から声がかかると、自身で保有している大工の作業道具を持参して作業現場に赴く、という業務委託の形態をとっており、屋号はあるものの、事務所や店舗などを構えていることもありませんでした。
当事務所の弁護士は、依頼者からご相談を受け、借金総額・収支状況等を踏まえると、自己破産がベストの選択であると判断しました。
そして、自己破産をしたとしても、上記のような業務形態等からすると、後述する「自由財産の拡張」の手続きを活用することにより、大工の仕事を継続することも可能であると判断しました。
そこで、自己破産の申立てを行うことで、当事務所にご依頼いただくこととなりました。
その後、当事務所の弁護士が自己破産の申立てをしたところ、依頼者が個人事業主であることから、財産の調査の必要があると判断され、裁判所が破産管財人を選任することとなりました。
そして、当事務所の弁護士は、依頼人は今後も大工を続ける予定であるが、大工の作業道具が売却されると大工を続けることができなくなるため、作業道具を保持したいという理由で「自由財産の拡張」の手続きを申し立てました(自由財産の拡張の手続きというのは、自己破産をしても一定の財産を手元に残すことができる手続きのことをいいます)。
その結果、無事、依頼者の手元に大工の作業道具を残すことができ、大工の仕事を続けることができるようになりました。
このような当事務所の弁護士の活動により、依頼者は、自己破産による免責(借金の免除)を受ける一方で、「自由財産の拡張」の制度を活用することにより、手元に大工の作業道具を残し、今後も大工の仕事を続けることが可能となりました。
3 所感(解決のポイント)
個人事業を営んでいる方の中には、自己破産をすれば、借金が免除される代わりに、今の仕事を変えなくてはならない、と懸念されている方もいらっしゃるかと思います。
もっとも、業種によっては、本件のように、作業道具を残したまま、同じ仕事を続けることができる場合があります。
個人事業主の自己破産について、お悩みの方は、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。