ペアローンの債務者である夫婦や親子がともに個人再生を申し立てるのであれば、住宅資金特別条項付個人再生を利用することができます。
また、ペアローンの債務者の片方だけが個人再生を申し立てる場合であっても、もう片方の債務者の住宅ローンを担保する担保権が実行されるおそれがなく、債権者も同意しているときには、住宅資金特別条項付個人再生の利用が認められることがあり得ます。
ペアローンとは、夫婦や親子がペアで個別に住宅ローンを組み、それぞれが単独の債務者となり、お互いに連帯保証人となるというものです。
そして、住宅の名義はそれぞれの負担額に応じた共有となり、不動産全体に両方の住宅ローンについて抵当権が設定されます。
住宅資金特別条項付個人再生を利用するための条件として、住宅が単独名義である必要はなく、ペアローンのように共有名義となっていても問題はありません。
一方で、ペアローンの片方の債務者の不動産持分に、もう片方の債務者の住宅ローンを担保する抵当権が設定されている点が問題となります。
すなわち、形式的にみると、住宅資金特別条項付個人再生の利用条件である「自身の住宅ローン以外の抵当権等が住宅に設定されていないこと」を満たさないことになるのです。
この点、「自身の住宅ローン以外の抵当権等が住宅に設定されていないこと」が住宅資金特別条項付個人再生の条件とされるのは、他の抵当権等の実行により住宅を失うことになれば、住宅資金特別条項付個人再生の利用を認める意味がなくなってしまうからです。
そうすると、もし自身の住宅ローン以外の抵当権等が住宅に設定されていたとしても、その抵当権等が実行されるおそれがなければ、住宅資金特別条項付個人再生の利用を認めてもよいということになります。
そのため、ペアローンの債務者である夫婦や親子がともに個人再生を申し立てるのであれば、住宅資金特別条項付個人再生を利用することができます。
このような場合には、お互いに他方の住宅ローンの抵当権が実行されるおそれがないと言えるからです。
また、同様の理屈で、ペアローンの債務者の片方だけが個人再生を申し立てる場合であっても、もう片方の債務者の住宅ローンを担保する担保権が実行されるおそれがなく、債権者も同意しているときには、住宅資金特別条項付個人再生の利用が認められることがあり得ます。
なお、ペアローンの片方の債務者は、もう片方の債務者の住宅ローンを連帯保証しているところ、個人再生をすることで連帯保証債務が減額を受けるのではないか?という問題があります。
連帯保証債務は、自身の住宅ローンではないためです。
この点、連帯保証債務が減額を受けると、債権者によって連帯保証人の信用不安や担保の毀損を理由に一括払いの請求や抵当権の実行(競売)が行われるおそれがあります。
しかし、そうなってしまうと、住宅資金特別条項付個人再生の利用を認める趣旨が損なわれてしまいます。
そこで、上記のように住宅資金特別条項付個人再生の利用が認められる場合には、自身の住宅ローンだけでなく、連帯保証債務についても減額を受けないものと考えられています。